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平(たいら)和(かず)

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to do a Bradbury

2002年のソルトレークシティー冬季五輪のスピードスケードで一躍有名になったオーストラリアのSteven Bradbury。そのわけは単に金メダルを獲得したからではなく、ほとんどビリだったのに、最後の最後で先を行っていた他のスケーターが皆転倒し、彼だけが転ばずに完走(完滑?)したからである。昨日インタビューされているのを見たが、勝利の瞬間も果たして「ここで腕を上げて嬉しそうな顔をしていいのか」戸惑ったのだそうだ。この驚異的な勝利および幸運は、"to do a Bradbury" という新フレーズになり、「意外な勝者」を表す言葉としてしばらくオーストラリアで使われていたらしい。強豪相手でも戦ってみる、他人より劣っていても最後までやってみることの価値の教訓的なものがこのフレーズの陰に隠れているようだ。日本ではここのところ「負け犬」という言葉が使われているそうだが負け犬が思わぬ大勝利で「最後に笑う」ことだってあるのだ。

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常に上をめざせ

数年前担当したクラスはチームワークが抜群で、教えていて非常に楽しいクラスだった。通常年末の打ち上げはレストランで行うのだが、そのクラスでは生徒の一人が自宅を提供してくれ、皆が料理を持ち寄って和気あいあいのパーティーとなった。

夜も更けてきたころ、オーストラリア人の生徒Mさんが、身の上話を始めた。しかもパーティーにはあまりふさわしくない話題である。昔、別れたご主人に暴力をふるわれていたというのだ。「あの頃はね、よく家を飛び出して町中をうろうろしたものだわ。行くあてもなくてね。」が、Mさんの語り口がさばさばしていたからか、又は気の合うクラスだったからか、不思議と場がしらけるということはなかった。「そんな男なら別れて大正解だ〜!」などという意見が飛び交っていた。

Mさんは実は有名私立校で日本語を教えている女性だった。常にほがらかで、エネルギーに漲っていて、学期中足を折った時も松葉杖で登校してきたくらいだ。日本語コースが終わったら新しいパートナーとクイーンズランド州に越すのだと言っていた。

数年後Mさんと再会する機会があった。新しい勤め先では英語を教えていて、学部長に昇進、という話も出たと言う。が、彼女は首を横に振り、「私がしたいのはあれ」と「校長室」のドアを指差したのだそうだ。その意志の強さが認められてか彼女は今某高校で校長をしている。Mさんは私に、絶対に自分を見くびるな、そうすれば上昇あるのみだ、ということを教えてくれた忘れられない先生である。

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インスタントで日本語をペラペラ話す(ように見せかける)方法

数年前、従兄弟たちがオーストラリアに休暇でやって来た。空港に迎えに行った時、どうしても今化粧品を買いたいというので付き合った。化粧品店ではオーストラリア人の女性がにこやかに迎えてくれ、英語が全くわからない従妹に向かって説明を始める。私も横で聞いていたのだが、日本語しかわからない従妹にはこう聞こえたはずだ。「ナントカカントカ ペラペラペーラ ナントカカントカ くちべに。ペラペラペーラナントカカントカ くちべに ペラペラペーラ…」私が通訳した上で従妹はめでたく買い物を済ませた。が、店を出た途端彼女が言った一言に私は吹き出してしまった。「和ちゃん、すごいなあ、あの店員さん。日本語が出来たでえ。」ええっ?彼女が使った日本語は「く、ち、べ、に」のみである。それなのになぜか従妹には日本語ぺらぺらに聞こえてしまったようなのである。

日本人は日本語が世界で一番難しい言語だと考えている節があるので、外国人が一言「コンニチハ」とでも言おうものなら「あっら〜!日本語がお上手ですねえええ。」と感心することが多い。そういった反応はまあ初級者には嬉しいものではあろうが上級者にはその褒め言葉を受けること自体がまだ向上の余地がある証拠なのだと解釈する人もいる。

日本語教師もクラス初日はこういった「第一印象」に気をつける必要がある。ちょっと日本に住んでいた人や、アニメファンなどはいやに教科書離れしたナマの表現を知っているので、「うわっ、上手!」という印象を受け、このクラスじゃ簡単過ぎるのでは?と心配してしまうことがある。が、大抵こういう人達は基礎が全く出来ていない。そこで私はよく、「これ、テストじゃないけどちょっと力だめしにやってみて」と文法の基礎の基礎の部分を表にしたものを埋めるタスクをさせる。例えば「です」の過去形は?とか「ます」の否定形は?とかそんなことだ。それをやらせてそっと教室を回ると、さっきあんなにペラペラに聞こえた学生が白紙同然の表を前にウンウン唸っていたりする。 一般の日本人は騙せても日本語教師は騙せないのだよ。

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