もう一つ、Aさんには驚かされたことがある。もう何年も教えた後で、こんな「告白」があったからだ。「昔は日本人なんて大嫌いだった。」…「えーっ?!?!?」と驚く私に彼は言った。「オヤジが戦争行ったからね。日本人なんて、だいっきらいだと思ってた。でも、娘が日本語を習って、ホームステイなんかすることになった。嫌だったね。でも、仕方ないから、行ったよ、日本に。娘に会いにさ。そしたら、ホントに驚いたよ。あの歓迎ぶり。あんな親切を受けたのって初めてだったな。」そこでAさんの日本への思い込みは180度回転したらしい。日本人の友達ができた。日本語を習い出した。その後も何度も日本に行った。日本からも友達が来た。
ガイジンが家に泊まりに来た場合、大歓迎するのは日本では一般的な風潮だろう。最高のおもてなしをし、何もかもおごるのが、当たり前かもしれない。が、それがAさんには信じられない親切だった。ジャパンは彼の一番好きな国になったのだ。
私は貧乏の為、九年間帰国できなかったことがあった。が、九年ぶりに帰国した時に、カンタス航空で、「二階」に連れていかれ、ゆったりとした座席でワイン一本を無料で進呈され、素晴しい時を過ごした。オーストラリアに戻ってきた時、Aさんが「どうだった?」と言うので「行きの飛行機で、すごいサービスを受けたよ。」と報告したら、「それはよかった。従弟がカンタスに勤めてるんだよ。センセイが九年ぶりに里帰りするからって、ビジネスクラスにしてくれるよう頼んでおいたんだ。」と言われた。
Aさんはもうけっこうなトシのはずだが、元気だろうか。出来の悪い子供ほど可愛いというが、出来の悪い生徒ほど思い出深かったりする。
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