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平(たいら)和(かず)

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C君、爆発!

先日、自閉症のC君が爆発してしまった。それは一人ずつスピーキング・テストの練習をしていた時。待っている生徒は自習スタイルで準備していたのだが、C君の独り言が段々耳につくようになってきた。「こんな言葉、見たこともない!」「わからないっ!」「だめだっ!こんなんじゃテストに落ちる〜っ!」…とうとう顔を真っ赤にして叫びだした。彼は自分自身に腹を立てているのだが、その怒りが大声になってしまうので、まるで回りにいる人間を罵倒しているかのように聞こえる。クラスメートは呆然。私も「落ち着きなさい!」と言いつつどうしたら一番いいのか見当がつかなかった。「わからないならヘルプしてあげるから、知らない言葉を書き出しておきなさい。叫ぶ必要はありません。」「でも!だって!全然わからないんだよーっ!全くわからないんだーっ!」

皆が帰ってから話すことにした。まだ興奮で手をがたがたと、まるで自分のものではないかのように震わせている彼。が、話してみると彼の弱点がわかってきた。テストは買物のロールプレイで、カードに書いてある指示に従って買物をするという設定なのだが、例えば「高くも安くもないワインを買うこと」と書いてあると、C君は「高くも安くもないワインを下さい。」と言おうとしてしまうのだ。が、勿論そんな言い回しはまだ教えていないので「わからない」不満が募ってしまう。「ねえ、C君、こんな指示の時は直訳しないで、まずは店員に値段を聞けばいいのよ。そしたらどのワインが中くらいの値段かわかるじゃない?英語で買物する時だってそうでしょ。最初っから全部条件を言わなくても店員さんとのやりとりで決めたり、決まっていったりするじゃない?」「で、でも…ボク、英語でもまともに買物できない…。」うつむいたまま又ぶつぶつ言っている。そして突然「ねえ、先生、日本にも精神障害の人って多いの?何人くらいいるのかな?」「さあ…。はっきりした数字はわからないけれど、勿論そういう人もいるわよ。でもどうして?」「もし、あんまりいないならさ、僕なんかが急に行ったら、変に思われるだろうと思って…。」その後彼はまたぶつぶつ独り言のように、いままで口に出してではないが何かと差別を受けたことに対する怒りを連ねていた。彼が今まで味わって来た、そして今も味わっているだろう孤独感は自分の想像をこえたものであるに違いない。そんな時彼の携帯が鳴った。今日は誰かが迎えに来てくれるのだと授業前に言っていた。「もう誰か来てくれたの?」"Yes, my mother's husband." …継母ならぬ継父か。まあこちらではタブーな感じはないけれど、でもやはり複雑な家庭の事情もあるのかもしれない。

最近やっとたまにクラスメートがC君に声をかけるようになってきていたのに、今日のことでまた皆が遠ざからないかが心配だった。幸い例の「苦情おじさん」をはじめ数人は早退していたのだが…。「C君、じゃあ、覚えたほうがいい表現にはマルをしたから、これを勉強するようにしてね。あとは心配しなくていいから。」「はい」、といつものように教室のドアを出てからペコンとお辞儀をしてC君は帰っていった。お辞儀をして帰っていくのはクラスで彼だけなのだ。C君、あなたは本当に素晴らしいものをいくつも持っている。それに気づいてもっと自信を持って生きてほしい、と切に願った。

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