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平(たいら)和(かず)

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奇跡の日本語クラス

今まで何度かコースに関して絶体絶命の危機に見舞われたことがある。開講に必要な人数にあと一、二人足りなかった時や、ドロップアウトした学生が多く、コース途中でキャンセルされそうになった時だ。人数が足りなかった時は過去そのコースに参加した学生一人一人に電話をかけ、「もう一度しませんか?」と「勧誘」しなければならなかった。「えーっ?日本語コースぅ?もう随分前のことですよねえ、私が参加したのは。」などと言われると恥ずかしくもあり情けなくもあった。まさに藁にも縋る思い…。しかし不思議なものでこのような万事休す状態に頭を抱えていると常にどこからともなく誰かが颯爽と現れハッピーエンドに導いてくれたのだ。入学手続きの日が過ぎてから急に希望者から電話が鳴ったり、又は突然オフィスに「実はこのコースについて知ったばかりで手続きがまだなんですけど…」と誰かが入って来たり…。

今でも覚えているのは学生数が減ってコースが途中でキャンセルされそうになった時。どうしてもあと三、四人が必要だった。同じレベルで違う曜日のクラスの学生に泣く泣く(?)事情を説明すると幸い数人が動いてくれた。でもまだあと一人、どうしても足りない。が、その日たまたま、ある身障者の学生の付き添いで来ていた女性が「是非入りたい」と言う。「え?でもこのクラス初級ではないから途中で入ってもついてこられないかもしれませんよ。」と正直に言うと「いえ、私、高校で日本語やったことあるんです。」信じがたい幸運にポカンとしていると身障者の学生も「うん、○○さんの日本語、ボクよりうまいよ。」と証明してくれる。彼女が早速その日のうちに支払いを済ませてくれたことでコース継続は確実になった。

が、その日以降彼女は全く顔を見せなかった。身障者の生徒に聞くと「うーん、なんだかおじいさんが亡くなったとかでちょっと色々あるみたい」。そんなわけで結局彼女には二度と会わなかった。一学期分の授業料を払ったというのに…。彼女はきっと通りすがりのエンジェルだったのだ、と私は今も思っている。


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