あるクラスで。ここ数年、期末試験と言えば作文、読解問題、先生との会話、テープでの聴解問題がお決まりコースだった。しかし生徒によってはもっと創造力を試すようなテストのほうが力を発揮する人がいる、というのも経験から知っていた。そこで、今年からプレゼンテーションをやってみようと思い、それは九月に学期が始まってすぐ発表した。学生の反応は意外にネガティブだった。「筆記のほうがいい」「人前で話すなんて英語でもできない」等々。昨夜はその詳細を発表した。プレゼの下書きをwritingとして提出すること。各プレゼンテーションの後にはクラスメートから質問されるからそのつもりで、と話していると突然、一人の女生徒がなにやら聞き取れないことを言ったかと思うと半べそ顔でドアをバッターンと閉めて出ていってしまった。え?何なの?どうしたの?今なんて言ってたの?生徒達は「他の科目でも沢山宿題が出てるからできないとかなんとか言ってたみたい。」・・飛び出していった生徒は香港出身の、ティーンエイジャーで通るような容姿の女性だが、もう小学校に行っている子供もいる成人だ。なので私は追うこともせず、授業を続けた。しばらくするといつも彼女と仲良くしている19歳のオーストラリア人の男の子が無言で教室から出て行った。彼女を探しに行ったのだろう。数分後、今度は普段特に仲良くしているわけでもない女の子が、やはり教室を出て行った。もう、勝手にしてちょうだい。
十五分もたったころ、三人とも戻ってきた。飛び出していった女性には笑顔が戻っていた。ちょっと恥ずかしそうに、「先生。私今他にもやることが沢山あるんです。山ほど。私にとって英語は外国語だし、日本語はその次の外国語。だからもうとても出来ないって、思っちゃった。先生だって、この気持、わかるでしょ?」うん、わかる、わかる。大丈夫。来週から少しずつプレゼの準備しよう。手伝ってあげるから。心配しないで。彼女は頷いた。一件落着だった。普段はなんとなくバラバラで、まとまらないクラスなのだが、この事件のお陰で隠れた友情も見ることが出来た。

