プライベートなお話(1)
駆け出しの頃はよくプライベート・レッスンをしていたが、ここ数年はとらないことにしている。が、もう十年以上も前から教えている人が三人、それと六年程教えている人が一人、計四人残っている。そのうち二人は一緒に来るのだが、もう六十代の女性達だ。一人はもと精神科医で、もう一人は法廷速記者(あの、映画でよく見る裁判中にタイプをする人)だった。精神科医はスリランカ出身で、法廷速記者はオーストラリア人。今は二人とも退職しているが、特に日本に行く予定もない。日本人の友達がいるわけでもない。日本語はただ、趣味みたいなのだ。話すのはいまひとつだが、二人とも記憶力はものすごくいいし、文法もきちんと理解しているので、日本人向けの物でも読んでいくことができる。私はけっこう自分の趣味で面白いと思うものを選んで渡す。一度、一人が乳がんにかかってレッスンが数ヶ月中断されたが、彼女は全快した。このプライベートレッスン、これからあと何年続くのだろうか。。気長に、のんびりと、好きな教材で教える。テストも採点もない。ただ、何かを読んでその過程を楽しむ。それは教師にとってはちょっとした贅沢にも思える。

